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曼荼羅 マンダラ の「かたち」と「いろ」について

张贴者SATOYuya 上
曼荼羅 マンダラ の「かたち」と「いろ」について

◎マンダラの色やかたちの見方

曼荼羅(マンダラ)の中には様々なかたちや色が使われています。
そのかたちや色を見る際には、大きく次の3つの観点で捉えることが出来るでしょう。

曼荼羅をデザインとして捉え、そのデザインを構成する要素としてのかたちや色を知ることでデザインのヴァリエーションを見ていく。
曼荼羅を宗教美術として捉え、聖域を描いた曼荼羅の中で、どのような光景を表す図形や色であるのかを見ていく。
曼荼羅を密教法具として捉え、かたちや色の組み合わせ等のパターンを知ることで、そこに込められた密教思想を見ていく。

◎曼荼羅のかたち

◇曼荼羅デザインを構成する図形
曼荼羅のデザインの構成要素としてのかたちは、四角・円・半月・三角などの幾何学的な図形や、蓮の花を図案化したものなどがあります。中でも正方形や円が最もよく見られます。蓮の花の図案も比較的多く、円は同心円で描かれることもあります。

◇図形のもつ密教的な意味
密教では、仏を植物や動物あるいは怪獣などの有機的な生物や、無機的な物、あるいは梵字の一文字で象徴的に表現することがあります。同様に図形も象徴的な表現として用いられ、こうした象徴表現は密教の特色のひとつと言えます。

密教において図形は単なる「かたち」ではなく、何かしらの意味や役割をもつものであり、その意味や役割はその図形のもつ特徴に由来すると考えられています。

図形の象徴表現としてよく見られるのは万物の構成要素である五大(地大・水大・火大・風大・空大)です。
それぞれ下記のように対応しています。

地・・・四角形
水・・・円形
火・・・三角形
風・・・半月形
空・・・宝珠形(団形)

この五つの図形を基本として、それを立体的な造形にしたものが五輪塔です。

また、仏に祈願する修法で用いる壇の形状は、祈願の内容に応じて決められています。
祈願の内容(四種法)と図形との対応は次の通りです。

息災・・・円形
増益・・・四角形
敬愛・・・半月形
調伏・・・三角形

※四種法の内容と図形との関連性
「息災」
災いを鎮めること。天変地異・病気・煩悩といった負の要素を消除し、現状における円満もしくは完全性を求める修法。
⇒完全性を表す円形

「増益」
長寿・子孫繁栄・商売繁盛など、現状以上の福徳を求める修法。
⇒安定性や拡がりを表す四角形

「敬愛」
他者の愛情や恩顧を求めることを目的とした、現状以上の福徳を求める修法。
⇒満月に向かっていく発展性や動き、不安定さを感じさせる半月

「調伏」
悪霊屈服・戦勝・政敵排除など、相手の威勢を低下させること目的とする修法。
⇒危険性あるいは攻撃性を感じさせる三角形

曼荼羅に描かれた聖域の中のかたち ー四角形と円形ー

仏の坐す聖域を表した曼荼羅において、その聖域を守っている図形が四角形と円形です。
具体的な例として、宝楼閣曼荼羅と金剛界曼荼羅の四印会と成身会を見てみましょう。

宝楼閣曼荼羅には、4つの門のある四角形の枠が城壁のように描かれています。
実際に修法を行う際の四角形の土壇も、経典に倣って四方に門を置くのですが、この四角形の土壇は王城を模していると言われます。
仏を王とみなし、仏の坐す聖域を王城になぞらえ、それを守る城壁が四角形や枠として描かれていると考えられます。
そして、門番のようにして守護のモチーフである金剛杵などが描かれていたり、あるいは門が描かれていなかったり、廻廊のような部屋としての四角形が描かれていたりと、
曼荼羅によって表現は多少違うものの、四角形や枠・区画等はいずれも聖域を守護する役割であると言えるでしょう。

金剛界曼荼羅の四印会と成身会には、四角形の枠に囲まれた内院を区画するように大円が描かれ、内部を守るように金剛杵を連ねた大円の輪郭が形作られています。
この金剛杵を連ねた円形もまた、円形土壇におけるチャイティヤを模したものであるとされます。
元々、チャイティヤとは霊が宿ると考えられ神聖視された樹木や、その下の祠・岩・泉など、礼拝供養の対象一般を表す語でした。
仏教の初期において、釈尊の遺骨を納める仏塔を礼拝対象の中心としていたために、チャイティヤは仏塔をさす語としても用いられるようになりました。
インドの仏塔は半円球のドーム状で、平面で見ると円形です。その周囲は欄楯(らんじゅん)で囲われ、四方には門があります。円形土壇でも同様に、四方に門を開くことが経典などに書かれています。

◎曼荼羅の色のもつ意味

密教では、赤・白・黄・青・黒を五正色(ごしょうじき)または五大色(ごだいじき)と呼び、基本色とします。この5色を単なる「いろ」ではなく、図形と同様に象徴的な役割をもつものとして捉えます。
この五大色は、万物の構成要素とされる五大と、さらには金剛界曼茶羅の五仏と、次のように対応しています。

地大・・・黄色・・・宝生如来(南方)
水大・・・白色・・・大日如来(中央)
火大・・・赤色・・・阿弥陀如来(西方)
風大・・・黒色・・・不空成就如来(北方)
空大・・・青色・・・阿閃如来(東方)

さらに、図形と同じように、修法の種類によって用いる色が決まっています。四種法と図形・色の対応は次の通りです。

息災・・・円形・・・・・・白色
増益・・・四角形・・・・・黄色
敬愛・・・半月形・・・・・赤色
調伏・・・三角形・・・・・黒色or青色

※四種法と色との関連性
「息災」:完全性を求める。天変地異の消除や病気平癒の鎮静
⇒夜空に輝く満月を思わせる、完全性のイメージの白色×円形。心理学的には白色は沈静を表す。

「増益」:発展を求める。子孫繁栄や商売繁盛
⇒金色にも似た黄色。富や繁栄を示す黄金を思わせる色。

「敬愛」:他者の愛情・恩顧を求める。
⇒赤色は心理学的には愛情の意。揺れ動く心の焔の色。

「調伏」:他者の勢威低下を求める。戦勝や悪霊・政敵の屈服を求める。
⇒黒色は風雲急を告げる黒雲の色。青色は「青筋を立てる」と言われるように怒りを表す色。

このように、五大と五色、修法と五色は、色の持つ意味やイメージを元に、五大の質や修法の目的それぞれにふさわしい色が対応しています。

たとえば、密教の修行法のひとつである観想(瞑想)において心の中に思い描く曼荼羅を白色で円形とするのは、それが心の中の満月であり、円形と白色がもつ完全性というイメージに対応させたのだと考えられるでしょう。

 

(参考:「曼荼羅の世界とデザイン―ほとけの「かたち」と「こころ」を知るために」松原智美 著/グラフ社)

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